震災で大変な被害を被った女川町。昨年は船着き場も地盤沈下で船がつけられない状態でしたが、港の改修が進んで漁船が荷揚げできるようになっています。平地には、まだ津波の痕跡の残る横倒しの建物がそのままになっていますが、大部分は更地になっていました。以前は、町をあげてのカラオケ大会が開かれていたそうですが、震災後、そのような催しはなくなっており、町民が参加できるイベントがやりたいというお声をきいて、女川町と女川町教育委員会、そして芸団協も共同主催として企画にかかわり、初めて紅白対抗歌合戦の形式でのど自慢大会を開催することになりました。
会場となった小学校の体育館は、修繕工事が間に合わず、窓ガラスが入っていないところを天幕で覆っての使用。したがって外気が否応なく入ってきます。大型ストーブを借りられるだけ借りてきて温め、ひざ掛けや携帯カイロを配ったりという準備が必要でした。当日は朝の八時半から、出場者たちはリハーサル開始。寒い会場でどうなることかと心配されましたが、いざのど自慢が始まってみると、町民のみなさんの熱意で、胸が熱くなる大会となりました。
呼び戻せ女川の笑顔!「女川町のど自慢大会~おらだづ歌自慢」と題し、冒頭で、特別応援演舞として、実業団による女川獅子舞が披露されました。津波で獅子頭、太鼓、笛、衣裳などの道具はもとより、仲間も流されて一時は女川の獅子舞は終わったかと思われたそうですが、財団等の支援をうけて、道具が揃えられお揃いの新品の法被をきた地元実業団のみなさんが、女川の獅子舞を復活させました。力強い太鼓と笛の音、勇壮な獅子舞に場内のみなさんは食い入るように見入っていました。
いよいよ紅白に別れて7組ずつ14組の出場者たちが檀上に揃います。司会を務めたのは、TBC東北放送の渡辺敏之さんと落語家の六華亭遊花さん。司会のふたりが「仮装大会じゃないよね」というくらい、衣裳や扮装にも凝った出場者もいます。予選を通ってきた方々だけに、みなさん歌は上手い! しかし、歌った後、今回みんなの前で歌いたいと思った理由を一言ずつ伺っていくと、お一人お一人が震災後のそれぞれのドラマを乗り越えてここに立ち、女川を元気にしたいという思いであふれていることが伝わってきます。
最年少は7歳の男の子、最高齢は84歳の女性。ずっと地元で暮らしている方だけでなく、ボランティアで訪れて女川に就職した人や、東京の大学を休学して地元の子どもたちの学習支援NPOで活動している学生など、いろいろな方がいます。そして、紅組の応援団、女川福幸丸と、白組応援団、商工会青年部の扇動で、客席は赤や白のタオルをふりふり応援します。商工会青年部は、女川のご当地ヒーロー、正義の味方イーガーに扮しての応援でした。出場者として、応援団として、女川を支えようとしている若者たちの姿がまぶしかったです。
14組が歌い終わった後は、ゲスト審査員のさとう宗幸さん、藍美代子さん、ヨシヒデさんのプロの歌手による歌。そして審査を経て、協賛各社・各団体から送られた賞の授与が行われました。優勝したのは紅組でしたが、勝敗ではなく、客席も含めて町民全員が主役となってつくりあげた大イベントでした。
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